ノンフィクション

リアルな現実の狭間で生まれる様々な感情

進路はコインで

今思えば3年生に進級する前に大分荒んでいたし、調子に乗っていたと思う。

結構教師たちの大人としての醜い部分が感じられるような年頃だったのかもしれない。


荒んでいた自分と戻りたいと願う自分と、反発する気持ちの中最後のクラス替えがあった。


『よし、クボさんが担任だったらやり直そう。高校にも行こう』


そんな風に思いながら、体育館での新学期の説明を受け、新クラスを確認しに教室を目指した。

誰が何組で、担任は誰でとか思う間もなく、三年四組、担任荒井の中に自分の名前を発見した。


他のクラスがワイワイする中、マジかよーという空気が漂う四組。

俺にはもっと気まずい理由があった。


一年のとき、一方的に拒絶して以来、一言も話していないコトミが隣に座っているのだ。

思えば、前の学校でも保育園のときにスカートめくりで散々泣かした子が俺の後ろにいたな。


それを恥と感じ申し訳ないと感じられる程度の良識は持っていたが、何と声を掛ければ良いか分からない。


担任が来るまでの間で思う限りの軽口と冗談でクラスを温めたときに、クスっと笑ったコトミを見て

『なに、笑ってんだよ!』というのが精一杯だったが。


ちょっと照れながら『話しかけても良いの?』というコトミを見て益々申し訳なさが募ったことを覚えている。



そして三年生になったこの一年がもっとも濃厚で刺激的で、良くも悪くも今の自分のルーツになっているような気がする。



まず、このクラス編成に大変な違和感を覚えた。

悪いヤツが一組のクボさんと四組の荒井に偏っている。偏るどころか集約されていた。


事実、教室に入るなり、不敵な笑みで俺たちを見つめているもんだから気味が悪い。


子供は子供でも牙を剥くことを覚えたオレはちょっとずつ色んなことを勝手に吸収していった。

まずは意見陳述。このクラス編成はおかしい、恣意的ではないか?と聞いたところ、あっさりと認めた。


『問題児と、お気に入りの生徒』は自分のクラスに入れてくれと。一応担任ごとに話し合うらしいというのは他の先生にも聞いたのだが、その結果がコレかと。勝手にクボさんに見捨てられたような気がしていた。たぶん違うんだろうけど。


案の定、恐怖政治のような空気になるのには時間がかからなかった。


問題児は殴るし、お気に入りの生徒にはスポーツ推薦や進学をネタに脅す。

俺が内心書を書かなきゃ高校に行けないだのバカみたいなことをいう。


進学校やスポーツ推薦をする側からすれば効果あるんだろうが、バカには何の脅しにもならない。

それでも1ヶ月くらいはまともに学校に行っていたが段々行かなくなっていた。


毎日のように怒鳴る担任と脅えるクラスメイト、教室の雰囲気も悪い悪い。


『バカらしい、アイツに頭下げるなら高校なんか行かねぇよ』


そう思いながらも中卒という不安と反骨で揺れ動く気持ちに嫌気がさし、100円玉を指で弾いた。


『裏出たら高校行かね、もう悩まねえぞ』


出た目は裏。俺の進路は決まった。そう思ったら随分と気が楽になった。


そこからの堕落っぷり早かった。


学校に行くのは目が覚めてから。好きなときに行く。

帰りたくなれば帰る。休みたい時は休む。天下りの官僚ばりの生活だった。


最初の内は軽口叩いてクラスを笑かしていたけど、夏休みも終わると女子の視線が冷たい。

表立って文句は言わないものの、明らかに邪魔そうな空気を感じた。


なので、おとなしく好きな本を読むことにした。一応漫画ではなく、伝記物とか活字の本を。

最初は注意されるがしまいには誰も注意しなくなっていた。あいつがおとなしいだけマシという意味だろうか。

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