ノンフィクション

リアルな現実の狭間で生まれる様々な感情

絶望と絶望と絶望。

引っ越して初めての朝、慣れない新居での目覚めだったが、父の一言でテンションが上がった。


『そういえば、この町にもゲーム屋があるようだぞ』


サッカーとゲームバカだった自分はご機嫌とりに貰った小遣いを握りしめて、市内にあるゲームショップに自転車を走らせた。


こじんまりとした店内の片隅にある、数台のメダルゲームとアーケードゲーム。

そこにいた数名の育ちの悪そうな同世代と思われる少年たち。


その日はゲームだけ買って帰ったが、一人でゲームしていても飽きてくるので、数日後、またゲームショップに足を運んだ



やる気はしないがチラリとゲームコーナーに目をやるとやっぱりバカそうな連中がたむろしていた。


『お前、どこのヤツ?』


狭い田舎町、よそ者ということが分かったのだろう、一人が声をかけてきた。


『今度引っ越してきたんだけど、地元の人?』


そこからは少年たちは余所余所しいながらも会話を交わした。


そこで分かったことが


・ここにいるメンツは大体同級生。先輩も数名いた。

・中学校のクラスは全部で4クラス。1組はハズレで担任がクソ野郎とのこと。

・あと、部活はサッカー部はない。


…サッカー部がない?そんな学校があるのか?と信じられなかった。


バスケ部はある、野球もある、テニスも剣道も柔道もある。卓球さえもあるのに唯一サッカー部だけないとのこと。


サッカーバカからサッカーを取ったらバカしか残らないじゃないか、今になってはそう思えるが

その当時のショックは尋常じゃなかった。


俺は何をしにココに来たんだ!?サッカー選手になれるのか?いや、サッカーが出来るのか!?


家に帰るなり父に問い詰めた。


『おい、転校先の学校はサッカー部ないって言ってたぞ!!』


『サッカー部がない学校があるわけねぇだろ、大丈夫だろ』


そこでゲーム屋で地元の同級生になるであろうヤツらから聞いたことを話したら、さすがにバツが悪そうな顔をした父がいた


『いやー、そこまでは調べてなかったなー。でもしょうがないな、ないんだから』


知ってたら絶対に来なかった、サッカー部がないだなんて。

電車が1時間に2本くらいしかないし、各駅停車しか停まらないし、映画観に行くのに電車で1時間もかかるし、

アホみたいに長い坂道の途中に家があるし、愚痴を言いだしたりしたらキリがないくらいに最悪な町だった。

×

非ログインユーザーとして返信する